清凉寺の仏像探訪
総論
2022年11月3日に京都府右京区の「清凉寺」を参拝しました。
こちらは、二つの国宝仏と嵯峨大念仏狂言で知られる寺院ですが、周辺の「大覚寺」や「天龍寺」と比べると知名度は落ちるのかもしれません。
しかし、二つの国宝仏は周辺の寺院の中では、完成度の高いものであり、個人的には嵯峨野を探索には欠かせない寺院と思います。
清凉寺について
清凉寺はもともと源融という人物の邸宅跡に、子孫がお寺を立てたのが始まりですが、その後チョウ然上人が、現在国宝に指定されている「清凉寺式釈迦如来」を中国から持ち帰り、この地に安置するようになってから、このお堂が有名になり、「清凉寺」として隆盛していく中で、棲霞寺は縮小して、清凉寺のお堂の一つとして現在まで残ることとなり、その棲霞寺の本尊であったもう一つの国宝「阿弥陀三尊」は霊宝館に移されて春と秋の特別公開時期に限り、他の寺宝とともに公開されています。
本堂と清凉寺式釈迦如来について
①本堂
本堂内にてご朱印の授与と、本尊の拝観が可能です。
ただし、下記の通り秘仏のため通常は宮殿の扉は締まっています。
②拝観環境について
秘仏ですが、かなり公開時期が多いです。
御本尊の開扉は通例、毎月八日の法要後の午前11時以降と四月・五月、十月・十一月です。
いずれの場合でも、内陣に入り宮殿の扉が開かれ、間近で釈迦如来立像を拝せます。
ただ、須弥壇の高さもあり、やや距離はありますが、照明が当てられ相応にお姿を拝することはできます。
②釈迦如来立像について
宮殿に入ったままの拝観ですが、正面から拝することができるので特徴的な「縄を編んだような螺髪」「瞳には黒い石がはめられる」「通肩の衣」「胸から腹にかけて同心円状の衣文がある」「膝上に茶杓子のような衣文表現がある」といった特徴は確認できます。
ただ、両袖側面の鋸の歯のような袖の表現については、正面からだたわかりにくいと感じました。
日本的な定朝様式の優しく穏やかな姿、慶派のような写実的な表現でもない、平安初期の日本的な表現でもない大陸らしい独特の顔立ちは見たら忘れられません。
③胎内納入品について
胎内の納入品は、本堂に「五臓六腑」、その他のものは霊宝館に展示されています。
本堂の脇陣にケース内にて「五臓六腑」が展示され、後で紹介する霊宝館の二階には納入品だけの展示スペースがあり、ここには胎内納入品が発見された時の新聞記事なども展示されており、詳細なことが紹介されていました。
④本堂内部と弁天堂について
本堂の内部は国宝仏の他に、様々な寺宝が展示されています。
弁当」重要文化財の「地蔵菩薩立像」などがあり、須弥壇後方の後陣から廊下を渡ると「弁天堂」とお庭、さらに先には方丈などが鑑賞できます。
紅葉の時期は弁天堂の周辺のおすすめ撮影スポットです。
阿弥陀三尊について
霊宝館の目玉にして、入り口に入るとすぐ目に付く大きな三尊です。
源融をモデルにしたともいわれ、没後に子孫が造像したといいます。
阿弥陀三尊としては、同じく国宝の仁和寺霊宝館の「阿弥陀三尊」とともに最古クラスの作例と言われています。
仁和寺の像がふっくらとして豊満な顔立ちなのに対して、清凉寺の像は頬が締まって精悍な顔立ちとなっているように感じました。
その他の霊宝館の諸仏
霊宝館は毎年春の4月から5月、秋の10月から11月に公開されます。
仏像は一階の展示です。
①四天王
仁和寺の「二天像」とともにずんぐりした体形の像です。
足元の邪鬼の踏みつけられ具合に注目してください。
かなり、ひどい仕打ちを受けている子がいます。
②十大弟子
京都府大報恩寺の像や神奈川県極楽寺の像に比べると、平安後期ということもあり、写実的な要素が薄く、浅い衣文と控えめの肉付きの大人しい造形です。
③兜跋毘沙門天と毘沙門天半跏像
こちらの「兜跋毘沙門天像」は、東寺霊宝館にある根本像を忠実に再現している像のひとつです。
しかし、鎖帷子のような部分を墨書きで表現しているなど、独自性もあります。
この毘沙門天は、珍しい半跏像の毘沙門天であり、近年に修復の上重要文化財に指定されたばかりです。(写真は奈良国立博物館の「毘沙門天 北方鎮護のカミ」展で購入)
2019年には奈良国立博物館で開催された「毘沙門天」展にも出陳されました。
そこで、奈良の常光寺の同じ姿の毘沙門天を鑑賞し、この形式の毘沙門天の生まれた経緯などに興味を持ちましたが、研究はすすんでないようです。
この二体も重要文化財指定ですが、特に普賢菩薩はその姿は片足を下げた帝釈天のような姿をされており、もともと帝釈天だった像を転用された可能性のある像です。
肩幅があり、衣がぴったりとしていて、引き締まった肉体に感じます。
文殊菩薩はなで肩ながら肉付きがよく見え、ふくよかに見えます。
⑤本尊胎内納入品の展示
霊宝館の二階は「本尊胎内納入品」とともに、現在京都国立博物館に寄託されている文化財の複製などが展示されています。
この他にも絵画なども展示されています。
御朱印について
2022年11月現在、御朱印は一種類、書置きのみの対応です。
札所巡りの御朱印はこの限りにあらず。
嵯峨大念仏狂言について
清凉寺の有名な行事です。
本堂で、この行事で利用されるお面が掲載された「クリアファイル」を見つけ興味を持った次第です。
今度実際狂言を見る機会があれば記事に加えたいです。
清凉寺のその他
多宝塔
初層が通常の本瓦葺、二層目が銅瓦葺という珍しい姿です。
経蔵
拝観料100円を支払うことで、内部の輪蔵を回すことができます。
内部の四方には四天王がいます。
清凉寺へのアクセス
①京都バス
京都駅より大覚寺行・清滝行にて嵯峨釈迦堂前下車
②市バス
上記のアクセスでは、「大覚寺」にも行けます。
③J R
嵯峨嵐山駅下車 北西0.5km
管理人が利用したアクセス。
駅の改札口を出て、「丸太町通り」まで歩き、そこを左折して「県道29号線」に出ます。
そこには歩道橋と横断歩道があり、どちらかを利用して北に進みます。
すると「甘春堂 嵯峨野店」があり、それをさらにまっすぐに進むと駐車場があります。
そこにある道を左側に行くと仁王門に行けます。
④京福電鉄
京福嵐山駅下車 北へ0.65km。